デンマークの旅でのメインイベントは、日本の工芸作家9組合同の展示会「日本の手工芸 Japanese handcrafts in Tversted」です。

9/8(土)と9/9(日)の二日間、滞在地のTversted Skoleの敷地内にあるギャラリーで開催しました。

 

ギャラリーはもともと幼稚園だったそうですが、中央のガラス張りのところから空が見えて開放的な空間です。

 

今回私が展示したのは、ずっと定番で作り続けている板締め絞りで染めたベビーウールのストールです。

色違い、柄違いで10枚出品しました。

上の写真のストールは左から、藍&ログウッド、茜&キバナコスモス、藍&メリケンカルカヤ、茜&メリケンカルカヤ、茜&キバナコスモス、でそれぞれ染めています。

そして「この植物からこんな色が染まる」ということを見てもらえたらと思い、8色のシルクモヘアの糸も色の見本として展示しました。

左から、桜、ウメノキゴケ、タデ藍、フェンネル、セイタカアワダチソウ、どんぐり、月桂樹、ユーカリ、です。

 

今回初めてご一緒した作家のみなさんは、本当に素晴らしいものづくりをされている方ばかり。直接ものづくりへの想いや、緻密な作業の工程、素材を扱う難しさ、素材をどこから調達しているのかなど、いろいろなお話を聞くことができて、とても刺激的で興味深かったです。

こちらは鹿革と鹿の角で作られた名刺入れ。加藤キナさんご夫妻の作品です。

鹿革を小さな絞りで丸い模様に染めてあり、中央の菊のモチーフは鹿の角から作られています。菊の花びらの立体感、超絶技巧です!形に仕上げるのもすべて手縫いで、非常に難しい技術だそうです。

角を彫るところを実演されていたのですが、ルーペを使わないと見えないほど細かくものすごく緻密な作業。

この革のブルーは藍染だそうです。藍の他にも茜やヤシャブシも革や角を染めるのに使うことがあるそうで、草木染と近い部分もあってお話が非常に興味深かったです。

 

こちらは竹村聡子さんの磁器の作品。

器の他に磁器でできた動物のマリオネットの作品もあり、私はそれが特に好きでした。動物たちの手足が動くようになっていて、動くと磁器ならではの繊細な音が鳴るのです。

 

勢司恵美さんの竹籠も美しかったです。

竹を割って編んでいく作業の実演もされました。流れるような手さばきが美しく、現地のお客さんもみんなくぎ付けでした。

 

織の道具などを素敵に展示しているのは、私の大学時代の同級生、和泉綾子さん。RIRI TEXTILEという屋号で活動していて、昔からりりーと呼んでいます。

りりーは織と草木染の染織作家です。埼玉の古くからある藍染工房でリネンの糸を染め、ストールなどを織っています。深い紺色の藍は、何度も何度も藍甕に浸けては酸化させて出している色だそう。染め重ねた本藍の色は深くて美しいですね。

 

パールや天然石を使ったジュエリーは長野麻紀子さん。

上の写真の中央にある小鳥のリング、めちゃくちゃ素敵で見とれてしまいました。

 

展示会のポスターのいちばん大きな写真に使われていたのが、狩野綾子さんのこぎん刺しです。

刺繍ですべて模様を入れていることは知っていたけれど、実際に作品を目の当たりにするとやはり存在感があります。一針一針刺したその積み重ね。

 

こちらはキャンドルクラフトの鈴木有紀子さんの作品。私の写真があまりうまくないのですが、緑の木のキャンドルは火を灯すとだんだん内側のロウが溶けて、木の上に三日月と雪が降る模様が透けて見えるようになります。

ろうそくを灯す時間を楽しむ作品。贅沢な時間の過ごし方、なかなかできないけど憧れますよね。

デンマークの人は家でテーブルや窓際などにキャンドルを灯すのが日常の文化だそうですが、デンマークでも鈴木さんの作品のような繊細に作られたキャンドルは珍しいようで、多くの方が興味を持たれていました。やはり富士山のキャンドルは日本らしくて人気がありました。

 

テキスタイルファイバーアートの舞良雅子さんの作品は、素材の活かし方がとても勉強になりました。

シルクやウールといった繊維素材が持つそれぞれの特徴や面白さを、織や縮絨、ミシンワークなどあらゆる手法で作品にされていて、素材の表情の変化や色味など細部まで見れば見るほど面白かったです

舞良さんは展示会の二日間で、手だけで糸を編む、というインスタレーションもされました。ハリのあるシルク糸を、壁から道具を使わず自分の手だけを使って編んでいきます。

最後には長さ6mぐらいになり、川の流れのハンモックのような大作となりました。

 

こんなみなさんと一緒に展示をすることができて、とても刺激を受けました。また逆に私自身のものづくりにもすごく興味を持ってもらえて、自分では特別に思っていなかったことが面白いと感心されることだったりして、発見も多くありました。

 

そして展示会の二日間は、予想以上に多くのお客さんが見に来てくださいました。

ギャラリーの周りには広大な農地や牧草地が広がっていてあまり人とすれ違うこともないのに、どこにこんなに人がいたんだろう!?という感じです。

 

デンマークでは草木染がどのくらい知られているのかまったく知識がなく、現地の方たちには草木染はどんな風に見えるんだろうか、日本での反応とくらべてどうなんだろう、と思っていました。

始まってみると多くの方が、まず「色がとても美しい」と言ってくれました。中でも特に藍の乾燥葉で染めた水色とウメノキゴケの赤紫色やピンク色に人気があり、のストールや糸を指さして「私はこの色が好き」「この色は素晴らしい」と。

「草木が秘めている色の美しさを多くの人に知ってもらいたい」その想いで日本でも活動していますが、遠く離れたデンマークでも色の美しさを感じてもらうことができて、それがとても嬉しかったです。

 

この展示会では、販売目的というよりは日本の手工芸を見て知っていただきましょう、ということだったのですが、当初の予想に反して多くの作家の作品をお買い上げいただきました。

私のストールもお買い上げいただき、そのうちのお一人の方との出会いが私にとって忘れられない大切なものとなりました。そのお話はまたPart 3で書きたいと思います。

 

松本陽菜

→デンマーク旅行記 Part 1