「四季の草木染 野の花工房」は、20数年前京都府宇治市で産声を上げました。草木染というものが、まだまだ今ほどには知られていなかった頃です。

草木染をしたいと思ったのは、今は人間国宝の、志村ふくみ氏の草木染の紬の着物を見たのがきっかけでした。結婚していたため弟子入りも適わず、草木染がしたいなという思いを抱えて10年近くが過ぎました。ある仲間の集まりで、よもぎで草木染をしてみようということになり、毛糸を染めたのが第一歩となりました。夫が着物の染色の仕事をしていたので、多くのアドバイスももらえました。

草木染の糸で編んだニット

休火山だった、草木染をしたい心が、10年を経て一気に噴出したのです。解らないまま手探りで、沢山の毛糸を色んな植物で染めてみました。数年すると、そんな毛糸が編み物好きの人の目に留まり、分けて欲しいとまで言われるようになりました。セーターに仕上げ、おそるおそる第1回目の個展を宇治市の画廊で開いてみました。新聞、テレビ、ラジオに取り上げられ、とても大きな反響でした。‥‥それが野の花工房の始まりです。

草木染の糸で編んだニット、その2

今住んでいる、自然豊かな井手町に引っ越してきてから20年近くになります。清らかな水と小さな野草が畦に一面に花を咲かせているのを見て、草木染に適した地だと、引越しを決めたのです。この9月に新しい工房に移るまで、ずっとその自宅のガレージで、個展の作品を染めたり、教室の人たちに教えたりを繰り返してきました。それはそれで家事をしながら、草木の鍋を炊くことが出来て、便利でした。

今年6月の町内の溝掃除がきっかけで、今の新しい工房を紹介されお借りすることになったのです。工房として使うのには、本当に具合よく出来ていて、2階もあるので広々としています。おまけに染場としてちょうど具合の良い土間に、洗い場もつけたので、ガレージで染めていた時よりも、随分と身体への負担も減りました。

今は、教室だけの移転で、まだまだ整っていませんが、来年4月の正式オープンまでには、「ギャラリー野の花」を含め、もう少し色々なところに手を入れなければいけないでしょう。ほとんどのっぺらぼうな小さな庭も、美しい花を植えたり、作業をしながら眺められる、緑多い庭にしてゆければいいなあと思っています。近頃、生徒さんから頂いた白い彼岸花の葉や、水仙、スノードロップ等の球根が小さな芽を出し始め、ささやかな緑が生まれています。アイリスやフェンネルの花が咲いてくれるのも楽しみです。

「草木染」を共に楽しみつつ、多くの皆様に親しんで頂き、成長してゆける工房を思い描きながら、今日も少しづつ草木染の作業に励んでいます。

皆様のより良いアドバイスとご支援を、心からお待ちしています。