「美しい水」がある地が好きである。
どこかに出かけてみようかなと考える時、まず景色の中に、水が美しく流れている、湧き出ている、あるいは滝があるような地に行ってみたいと思う。

滋賀県の醒ヶ井(さめがい)を訪ねてみた。朝8時位には、着いたので観光客もまだ居ず、ゆっくりと散策できた。梅花藻(ばいかも)の白いちいさな花が、深さ25センチ前後の清流の中に慎ましやかに咲いている。藻の緑が、流れにつれて揺れている様が心地よい。

驚いたのは、その流れの美しさを生かした、その地の人々の暮らしぶりである。梅花藻の可憐さの横に、西瓜ややかんが無造作に冷やされているのである。(水温は、常に15度位らしい)

切花もそっと生けられていて、この地の人が、とてもこの地蔵川の流れを愛しているのが解る。水をこんな風に、暮らしに取り入れて生活するのは、とても気持ちを安らかにして、豊かにするだろうな。

その後に、別の川のもう少し山に入ったところの養鱒場を訪ねた。25年ほど前に子供をつれて一度訪ねたことがあり、印象が良かった地である。山深い清流に虹鱒が群れ泳ぐ様を想像して‥
‥ところが、かなりがっかりしてしまった。流れが濁っているのである。いやな匂いも漂っている。おまけに、60センチ近い鱒が、2〜3匹白い腹を見せて死んでいるのがそのままにされている。その池で、小さな子供たちが、水着姿で水しぶきを上げているのに‥とても気分のめいる景色であった。

琵琶湖をほぼ一周して、家にたどり着き、夕刊(毎日新聞)を広げると、「橋板」復活の記事が出ていた。橋板とは、琵琶湖の西岸地方で野菜や衣類をすすぐために設けた小さな桟橋状のものであるらしい。琵琶湖に長さ約3メートル、幅約30センチの木製の板を突き出して、使っていたらしい。琵琶湖の澄んだ水の恵みを、地の人たちは益々実感することだろう。

普段何気なく使っている水ではあるが、「美しい水」の大切さを強く思った、暑い夏の一日であった