玉川提の桜が手に入りました。

草木染に使う、玉川提の桜の枝

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざが示すように、桜は切ってしまうと、そこから水が入り木が弱ってしまうので、枝は余程でないと切らないようですね。

 きっと通行の妨げや、何か家屋に支障があって切られたのだと思います。玉川の堤防沿いに、伐られた枝が積まれていました。喜んで生徒さん達と抱えて帰ってきました。つぼみはまだ固かったのですが、しっかりと花に行く色は蓄えられていたようです。小さく切り刻んだ小枝を煮出して染めてみると、美しい美しい花びらのような桜色が現れてきました。

 桜が咲きはじめるのは、後しばらくしてからですね。不思議なことに、咲いてしまった桜の枝からは、もう桜色は、現われてはくれません。満開の花びらが、きっと色を連れて行ってしまうのでしょう。

 教室のSさんが、実家のある鳥取の八重桜の枝を用意してくれました。雪の重みで、桜が倒れてしまったのを、雪が解けてから枝きりをして宅急便で送ってきたものです。多分大きな古木だったのでしょう。枝に苔が多くついていて、おまけに地衣類のウメノキゴケもついていましたから。

鳥取の八重桜の古木。コケやウメノキゴケが付いています

染めてみると、こちらの桜は、すこし淡いサーモンのような色でした。

Sさんは、「鳥取の山深いところからやってきて、京で花を咲かせられたね。美しく咲いて良かったね~。ありがとう」と桜をねぎらっていました。私たちも、遠くから来てくれて、綺麗な色を見せてくれてありがとうと、倒れてしまった古木に感謝いたしました。

 数日後、再び桜を染める機会がありました。和歌山の桜と京都市内の桜が手に入ったからです。

和歌山の桜の枝、草木染に使いました

和歌山の桜は、つぼみに、もうほのかに桜色が見えていました。持ってきて下さった教室のMさんは、もうすぐ咲きそうな枝を切るのはかわいそうだったと仰っていました。京都の桜は、未だつぼみが固く、両方のソメイヨシノを合わせて染めました。
染め上がって、竿にゆれる布を見ていると、桜が咲いたのを見ているような感覚になってきます。

草木染め、桜で染めたストールやハンカチなど

桜前線は、今年は少し早くなりそうですね。あちらこちらで、多くの人が桜をめでることでしょう。工房から歩いて2分程の玉川提の桜、山側へ登った地蔵院の桜も多くの人を喜ばせてくれるはずです。