こんにちは。
ののはな草木染アカデミー代表の松本 つぎ代です。
1990年より京都府・井手町で草木染め教室を始めて30年以上がたちました。
これまで草木染め教室・草木染め体験あわせて、のべ10,000人以上に草木染めを教えてまいりました。
草木染めについて、以下にまとめております。
是非ご一読いただき、ご興味を持っていただければ幸いです。
目次(クリックで各項目へ移動できます)
1-1、「草木染め」って、そもそも何?
1-2、草木染めの歴史
1-3、草木染めの旬
1-4、草木染めのメリット・デメリット
草木染めとは
「草木染め」って、そもそも何?
草木染め(草木染とも)とは、草木を煮出してつくった染液に、綿や絹(シルク)、羊毛(ウール)などの天然素材の糸や布、ストールなどの材料を入れて染めることをいいます。
一部の草木では、藍染や紅花染め、柿渋染めのように煮出さずに染めるものもあります。
天然染料というくくりで貝紫やイカ墨などの動物性染料、べんがらなどの鉱物染料を含めて草木染めとしているところもあります。
(美容院で植物原料のヘナや藍を使って髪を染めることなどを草木染めと言っていることもありますが、ここでは糸やファブリック素材に染めることのみを草木染めとして扱います)
草木染めの歴史
染色文化の歴史は古く、原始的な手法での染色は中国では紀元前3000年頃、ヨーロッパやインドでは紀元前2500年頃から行われていたことが分かっています。
日本では、縄文時代(紀元前1400年頃)から植物や貝紫などで染色が行われてきたとされています。
飛鳥時代(592年~710年)になると中国や朝鮮の染色技術が入ってくるようになり、この頃から日本の染色は急激に発達しました。
冠位十二階によって服の色が位づけされるようにもなり、奈良時代(710年~794年)には原色のようなはっきりした色彩を追い求めるようになりました。
正倉院宝物などを見ても植物による高度な染色技術がすでに確立されていたことが分かります。
明治時代(1868年~1912年)になって化学染料が輸入されるようになると、染色の世界は大きな変革を迎えます。
明治30年頃には植物染料のほとんどが化学染料に代わり、植物染料による染色は途絶えてしまいました。
その後、第一次世界大戦(1914年~1918年)によって化学染料の輸入が途絶えたことをきっかけに、古来の植物染料による染色の研究が再開されます。
昭和初期(1926年~)から盛んになった民芸運動の高まりとともに、日本各地で植物染料による染色と紬織が行われるようになりました。
「草木染」という言葉は、昭和5年(1930年)に作家で染織家の山崎 斌(やまざきあきら)氏が化学染料による染色と区別するために命名しました。
草木染めは、人間国宝である志村ふくみ氏の活躍などにより日本の伝統工芸としてその価値が評価され、現在まで続いています。
また近年では、自然や手仕事のものづくりに興味を持つ方が増え、幅広い世代で草木染めへの関心が高まっています。
草木染めの「旬」
染料となる植物には、採集する季節によって染まる色が変わるものがあります。
例えば桜では、1~3月頃に赤味が強くなり、さくら色やベージュがかったピンク色を染めることができます。
初夏の葉っぱが茂る頃には黄味が強くなり、オレンジ~茶色系が染まります。
草でも、例えばメリケンカルカヤは、葉と茎が緑色をしている夏には黄緑に近いような若々しい黄色が染まり、葉と茎が赤茶色になる秋から冬に採集して染めると赤味が出て黄金色に染まります。
季節ごとにいろいろな植物で染めてみると、植物が季節の移り変わりの中で日々変化していることを感じられます。
染料となる植物にも、野菜や果物と同じように美しい色に染まる「旬」があるのです。
◎草木染めに適した、草木の旬の一例
春:桜、カラスノエンドウ、タンポポ、ヒメジョオンなど
夏:ヨモギ、ドクダミ、フェンネル、藤、藍、赤じそ、ミント、高野槇など
秋:メリケンカルカヤ、栗のイガ、ビワ、ドングリ、キバナコスモス、セイタカアワダチソウなど
冬:梅、蝋梅、カリン、ネズミモチなど
通年:月桂樹、タマネギ、アボカド、杉、茜、ログウッド、蘇芳、ウメノキゴケなど
※上記の季節にしか染められないということではありません。土地の気候などによっても旬の季節は異なります。
草木染めのメリット・デメリット
◎草木染めのメリット
・化学染料にはない深みのある色合いが出せる(※)
・空き地の草木や庭木、プランターの植物、野菜など身近な植物を使ってできる
・ものづくりをする経験だけでなく、様々な植物の特徴や生態、意外な一面を知ることができる
・やり方がわかれば、台所や家庭にある道具を使って、安全にできる
・色が褪せてきても、同じ草木や違う草木も煮出して染め重ねられる
(※)
化学染料の色素は細かく均一なので、光の反射が均一で平面的に見えるのに対し、植物から抽出した色は、さまざまな色、形、大きさの色素が含まれているため光がさまざまに反射します。光の角度によって色合いが違って見えたり、化学染料では出せない深みを感じたりするのです。
◎草木染めのデメリット
・一般に化学染料にくらべて、日光や摩擦に弱い(堅牢度が低い)といわれている
→日光に当てても褪せにくい染料も多くある。また、色褪せてきたら染め重ねられる
・同じ植物を使っても、季節などの諸条件により同じ色を染まらないことがある(再現性が低い)
→採集した季節、草木の鮮度、採集した場所、染める素材によって変化する楽しみが草木染めの醍醐味の一つ
見直されている草木染め
草木染めでシルクの紬糸を染めて織り、紬の着物作家である志村ふくみ氏(人間国宝・文化勲章受賞)や、奈良時代の古い草木染めの研究者で染色家の吉岡幸雄氏が、テレビなどメディアを通じて世に草木染めの世界を紹介してきました。
自然と触れ合うことや、心の豊かさを求めている方が増え、「草木染め」という言葉や「草木染め」に対する共感が広がってきています。
・自然との関わりや文化などの感性価値を大切にする人
・自分の心を豊かにするものにお金を使いたいと思う人
・「モノ」があふれている時代にあって、「コト」(ストーリーや体験、ルーツなど)を重視する人
このような方々に、草木染めは注目されています。
私たちは、草木染めに関して「エコだからいいものだ」「草木染めは善、化学染料は悪」等の対立を生む発想ではなくて、「草木染めを通して自然とふれあうことができ、草木染を生活に取り入れることで自分が豊かになれる」という感性のもと、多くの方に楽しんでもらえたらと思っています。
草木染めをもっと学ぶには?
草木染めに興味を持たれた方を対象に、草木染めを楽しめる、学べる講座もご用意しております。
はじめは草木染めを独学で学んでいた方も、受講することで、染められる草木のことや染め方のコツがわかるようになった、と喜んでおられます。
詳細については、下の各講座のご案内へお進みください。
毎月1回、和気あいあい、ゆったりとした雰囲気の中で、草木染めの作品づくりを楽しめる講座です。
各地の支部教室でも学べます。
フリースタイル講座の詳細は→こちら
草木染めの知識・技術・表現方法を、実習中心で深く学べる本格的な講座です。
京都に通う【通学部】と全国からフルオンラインで学べる【通信部】があります。
草木染インストラクター養成講座の詳細は→こちら
あとがき
いかがでしたでしょうか。
この記事で草木染めに興味を持っていただけたならこの上ない喜びです。
最後に、私と草木染めとの馴れ初めについて、少しだけお話させてください。
〜
私が草木染めと出会ったのは30年以上も前のこと。
草木染めの人間国宝、志村 ふくみさんの草木染の着物を初めて見たその時から、心の底で草木染めへの憧れを持ちました。
「身近な植物からこんなにも美しい色を取り出せる」というのは、私にとって大変な驚きでした。
調べてみると、草木染はずっと昔から行われてきた染め方でした。
化学染料が発明されるまでは...。
ある日、夫の友人が、草木染めで糸を染めてみたいというので、手伝いました。
そのとき、何年も持ち続けていた想いが爆発したんです。
ヨモギでとても美しい色を出せたのですが「もうこれはなんとしても自分でやっていくしかない!」と思いました。
その頃、今ほど草木染めをやっている人はおらず、本もほとんどありませんでした。
独学で、昔の染色の本を見ながら、身の回りの草や木で試行錯誤を続けました。
まず、毛糸を染めました。
自宅のガレージでプロパンガスを使い、大きななべで...。
材料、温度、媒染剤、全て一人で試してみて、たいへんでしたが、楽しかったです。
独自の方法を見出せたこともあります。
草木染めで染めた毛糸を見た友人たちは、「素敵な色ね」と言って、買ってくれました。
私は「これを仕事にしたい」と思いました。
趣味ではなく、草木染めを仕事にしていこうと決心したのです。
そして、『野の花工房』を設立しました。
今では息子の拓美、娘の陽菜をあわせた3人で2015年に『ののはな草木染アカデミー』設立し「草木染インストラクター養成講座」も開始、草木染めの普及・発展に精を出しております。
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ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
あなたにとって草木染めが身近なものとなって、心豊かな生活を送れますように。