Part 2で書いたTvested Skoleでの展示会で、私の作品を買ってくださったBirgitte(ビアギッテ←正しいデンマーク語の発音とちょっと違うかもしれません)さん。彼女との出会いは、このデンマークの旅で私にとって忘れられないものとなりました。
Birgitteさんは展示会の初日に来られて、黄緑色のベースに板締め絞りで水色のドット模様に染めたストールをお買い上げくださいました。メリケンカルカヤの黄色に藍の乾燥葉のブルーを重ねて染めています。
日本ではこの色合いは身に着けにくいと思われることもあるのですが、デンマーク人は綺麗なブルーの瞳の方が多く、Birgitteさんもブルーの瞳だったのでこのストールがとてもお似合いでした。
ストールをお買い上げいただいた時点では何も知らなかったのですが、Birgitteさんもテキスタイルのアーティストで、旅の後半でアトリエを訪問見学させていただくアーティストのうちのお一人だったのです。
土日の展示を終えた翌日の月曜日、4軒のクラフトアーティストのアトリエを訪問することになっていて、Birgitteさんのアトリエにも訪問させていただきました。
アトリエに入るとすぐに作品が飾られていて、色合わせや模様がどれもめちゃくちゃ好み!!一緒に行った日本の作家のみなさんからも「素敵~!」と一斉に声が上がってました。
Birgitteさんの作品はシルクスクリーンによるハンドプリントで、オリジナルデザインの版を使ってざっくりとした風合いの麻生地に染められています。
ハンドプリントならではのちょっとした模様のズレやかすれ具合、そして色のチョイスと組み合わせが絶妙に素敵なのです!
トイレやリビングなど部屋のあちこちにも作品の布が使われていて、インテリア雑誌の中の世界みたい。
アトリエの隣の建物はショールームになっていて、そこに展示されていたアンティークの椅子がこれまたとっても素敵でした。
クラシックなデザインのアンティークの椅子にBirgitteさんの北欧モダンな布を組み合わせるという感性がすごくいいなと思いました。デンマークの人は家でも家具でも古いものを修理しながら大切に長く使う文化が当たり前だそうで、こうして古い椅子も布を張り替えて使う人が多いのだそうです。素敵な文化ですよね。
Birgitteさんは若いときからデンマークの伝統衣装に使われる布のプリントの仕事もされているそうで、「シルクスクリーンの技法ができる前は木の型を自分で彫ってプリントしていたのよ」と古い木型や図案も見せてくれました。
「伝統的な図案の仕事は収入的に安定していたけど、色もデザインも自由にできる自分の作品づくりの方が楽しい」と笑いながらおっしゃった姿が印象的でした。
いろいろな作品の中に、買ってくださったストールと全く同じカラーリングのドット模様のクッションを見つけてびっくり!!
遠く離れた国の親以上に年の離れた人なのに(なんと70歳を超えていらっしゃるそう!)、色彩感覚やドット模様が好きというところなどにすごく共通する部分を感じて、一気に距離が近くなったように感じました。
Birgitteさんは早速ストールを巻いてくれていて、私も彼女が染めた布を購入させていただきました。
その日私が巻いていたストールにも「それはどうやって染めてるの?」と興味を持ってくれて、「鉄と錫とチタン媒染を使って色を変えて、ユーカリだけでこの4色を染めてる」と必死に説明したけどちゃんと伝わったかな…(汗)日本語、英語、デンマーク語ばっちりのネルスさんでも、複雑な作業手順や媒染剤のことを訳すのは至難の業だったかも…。
言葉では十分にコミュニケーションが取れなかったかもしれないけど、お互いのものづくりを通して刺激を受けたりリスペクトの気持ちを共有することができて、それが何よりも嬉しかったです。
ものづくりがコミュニケーションツールとなって、違う国の年の離れた人とでも心を通わせることができる、それを実感する出会いでした。
Birgitteさん、ありがとうございます!!
松本陽菜