先日、秋晴れの気持ちの良い一日、教室の人たち数名と奈良の柳生の里にウメノキゴケを採集に行ってきました。
草木染教室の生徒さんの一人がその里のおじいちゃんと懇意にされていて、その村の道沿いの桜に、びっしりとウメノキゴケが付いていました。低い山並みの紅葉が美しく、各家の柿の木には鈴なりの柿が成っていて、刈り取りを終わった田と、どっしりと構えた日本家屋の屋根瓦の黒が美しく映えていました。
そんなのんびりとした風景に守られながら、ウメノキゴケを桜の木からゆっくりと剥がして行きます。 桜の木の生育のためには、ウメノキゴケはとってやる方が良いそうです。よく似た、マツゲゴケは採集しないようにと注意しながら。マツゲゴケが混ざると、ウメノキゴケからの美しい色が濁ってしまうからです。
お昼は、おじいちゃん差し入れの、ほかほかのえんどう豆(春に収穫した自家製を冷凍保存されていたもの)ご飯のおにぎりと持参してきたお弁当を、やはり差し入れしてもらった自家製のあったかほうじ茶で、本当に美味しく頂きました。空気が美味しいと食欲が進みますね。おじいちゃんの優しさに、みんなで感激してしまいました。
又、見慣れない野草が咲いていたので、尋ねて見ると「寒わらび」だと教えてくれました。麒麟草かなと思われる小さな黄色い花を咲かせた野草とともに、遠くにまでスコップを採りに行ってくださり、掘り起こしてお土産に持たせてくれました。今、工房の庭でゆっくりと根を下ろしています。どうか上手に育ちますように。
そしてご自分で育てている立派な長大根、丸大根、ほうれん草、小松菜も畑から好きなだけ抜いていったら良いよと言って下さり、沢山みんなで頂いて帰ってきました。
小さな町で、静かに暮らしているおじいちゃんの無償の行為のお陰で、どれだけ豊かな優しい気持ちになれたことか。こんな爽やかなつながりを持てた事が、ウメノキゴケを採集できたことよりも、心から嬉しいと感じられました。
その生徒さんの日ごろのおじいちゃんとの交流を、とても暖かい良いものだなと思いました。便乗させて頂いて、本当にありがとうございました。
ウメノキゴケは、裏を丁寧にブラシで掃除し、アンモニアとオキシドールを入れた水に漬け、毎日数分かき混ぜて、3ヶ月掛かってようやく赤紫の美しい色がもらえます。とても手のかかる草木染ですが、なくてはならない色のひとつです。
写真は、数年前にウメノキゴケで染めたモヘアの糸です。染液の濃度の違いで色々染まります。