インストラクター養成講座の上級コースでは、草木染の基本的な技術や技法を人に教えられるレベルまできちんと習得出来ているかを認定する「上級スキル認定課題」というものがあります。初級コースから中級コースの最初に学んだレッスン1~10の10種類の課題作品を、もう一度自宅で制作します。

課題の提出期限は11月30日。1ヵ月以上早く提出した人もいれば、締め切り当日にアカデミーまで持参してぎりぎりセーフの人もいました。

 

それではみなさんの作品をいくつかピックアップしてご紹介します。

 

①シルクストールのぼかし染

img_3193

この課題は、シルクスールを1種類の植物で淡色から濃色のきれいなグラデーションになるように染めます。植物によって染液の濃度や染まる速度が違うため、染液の濃度調整や染めるときの手の動かし方がポイントになります。濃い色の植物を使った方は、淡色と濃色の境目をぼかすのが難しかったようです。

(左上から、ログウッド、コチニール、杉、キバナコスモス、メリケンカルカヤ)

 

➁座布団用の麻生地をミョウバン媒染と鉄媒染に染め分ける

img_3205

この課題は、麻生平(あさきびら)という麻生地2枚を1種類の植物でミョウバン媒染と鉄媒染の2色に染めます。みなさんそれぞれいろんな植物で美しい色に染められていました。ただ、この麻生地は最後のアイロンがけも大事なポイントです。写真の上2つはシワなくきれいですが、下の2つはシワが残っています。下の2つもアイロンがけはされたそうですが、一人の方は「乾いた状態に霧吹きをしてアイロンをかけた」とのこと。この生地は全体が濡れた状態でアイロンをかけないと、シワが残ってしまうのです。

このあと座布団の仕立てに出すので、シワが残っていた方は再度生地を濡らしてアイロンがけをし直すことにされました。

(左上から時計回りに、赤じそ、西洋茜、ユスラウメ、杉)

 

③輪ゴムを使った絞り染

img_3209

この課題は、輪ゴムを使って曲線模様に絞り、ミョウバン媒染と鉄媒染の色に染め分けます。みなさん曲線の絞り模様も色の染め分けもきれいです。初級コースの授業でこの作品を制作した時は曲線の下描きに沿ってひだを寄せていく作業にみなさん苦戦されていましたが、この仕上がりを見る限りばっちり習得できていますね!

(上から、西洋茜、サクランボの木、メリケンカルカヤ、杉)

 

④ビー玉と洗濯バサミを使った絞り染

img_3216

この課題は、ビー玉と洗濯バサミを使って、ランチョンマットとコースターを染めます。ビー玉や洗濯バサミの配置がみなさんそれぞれ違って、楽しいデザインの作品が揃いました。洗濯バサミをずらして鉄媒染する手順も、みなさんばっちりできていました。

コースター(右上から時計回りに、クヌギ、メリケンカルカヤ、コチニール、ログウッド)

ランチョンマット(右上から、タマネギ、タマネギ、サクランボの木、コチニール)

 

⑤スラブ生地の結び絞り

img_3228

img_3227img_3230

この課題は、98cm×180cmの大きな生地に結び絞りで斜めにクロスした模様を染めます。結び方や結び目の数によって作品の印象が変わり、大胆な模様になるのが面白い技法です。みなさん結び絞りの手順やポイントををきちんと理解して染められていました。

(上から時計回りに、クヌギ、セイタカアワダチソウ、ビワ)

 

⑥4種類の割りばし絞り

img_3233

img_3237

多くの方が「一番難しかった」とおっしゃっていたのが、この割りばし絞りです。それぞれ折りたたんだハンカチを割りばしで挟んで染めるのですが、部分的に鉄媒染をする時に模様からはみ出したり汚れが付いたりしやすいのです。写真の作品はとてもきれいに模様が出て、鉄媒染の染め分けもきれいですね。

(上写真、キバナコスモス)(下写真、左コチニール、右酔芙蓉)

 

⑦板締め絞りの大判麻ストール

img_3249

この課題は板締め絞りの基本で、丸や四角などの板を使って模様を染めます。板で挟むときに締め方が緩いと、染液が滲んで模様の輪郭がくっきりと出ません。写真の作品はくっきりと模様が出て、鉄媒染したベースの色に地色の白とミョウバン媒染の色が映えてきれいです。

(上から、ヤマボウシ、メリケンカルカヤ、コチニール)

 

⑧縫い絞りのTシャツ

img_3241

縫い絞りにはいろんな種類があるので、縫い絞りの技法やデザインは自由です。縫い絞りは絞りの作業に一番手間がかかりますが、みなさんとても凝ったデザインで制作されていました。技術的にもしっかりと習得されているのが、作品に表れていました。

(上から時計回りに、ウメノキゴケ、黒豆、キバナコスモス)

 

➈ライン絞りの綿ストール

img_3254

ライン絞りは、地色の白・ミョウバン媒染の色・鉄媒染の色の3色のラインに染める技法です。簡単そうに見えて、意外ときれいにラインが出てない方が多かったです。染液で染めるときも鉄媒染するときも、生地と生地の間にしっかりと液を浸透させないときれいに3色のラインに染まりません。しっかりと浸透させれられていなくて、ラインがぼんやりとしてしまった方が何人かいらっしゃいました。写真の作品はとてもきれいに染められています。

(左上から時計回りに、モクレン、西洋茜、ウメノキゴケ、イヌマキ)

 

⑩板締め絞りの応用編で麻のれんを染める

img_3260

img_3263img_3262

img_3110img_3109

麻のれんはサイズが大きいため、板締め絞りの模様を入れて如何にムラなくきれいに全体を染めるかがポイントです。みなさん自宅のキッチンなどで大きなのれんを染めるのはとても大変だったと思いますが、生地の折りたたみ方や板の配置を工夫して様々なデザインで制作されていました。

(上写真、杉)(中央写真、左タマネギ、右キバナコスモス)(下写真、左マリーゴールド&クチナシ、右イヌマキ)

 

 

img_3098

提出して頂いた作品は、ひとつひとつ仕上がりを確認して合格か不合格かの判定をします。不合格となった作品は、もう一度制作して再提出していただきます。素晴らしい出来の作品もあれば、やはり失敗された作品もありました。お仕事や家事などをしながらも頑張って制作されたことがみなさんの作品から伝わってくるので、不合格の判定をするのはとても心が痛かったです。

でもこの課題をこなすことで、さらに力が付いたことは間違いないと思います。作業はどんな手順ですればいいか、きれいに仕上げるために注意しなければいけないことは何か。それをすべて自分で考えながらやってみることで技術は身に付くのだと思います。

講評会で自分の作品と他の人の作品を並べて見比べてみることで、いろいろな気づきもあったことと思います。

みなさん、お疲れさまでした!

 

インストラクター養成講座 講師

松本陽菜