昨年5月から始まった第7期「インストラクター養成講座」。これまで初級コース→上級コースで学んできた草木染の様々な技法や表現方法を使ってバッグのテキスタイルを制作し、バッグ縫製のプロの方に仕立てて頂きました。

通学部5名、通信部13名の受講生が約1年間の講座の集大成として制作した作品です。使った植物、技法など、またひとりひとりの制作への想いや感想を6人づつ3回にわたってご紹介致します。草木染でこんなにも様々な表現ができることをご覧いただければと思います。

 

Oさん 通信部 東京都在住 作品タイトル:悩める修了制作  

コンセプトは、「和と洋」とバッグ両面を違うテイストで作りたいという思いがありました。和面は藍で絞りを入れてと直ぐに決まったのですが、さて洋面は茜でどうしよう?民藝館で見かけた柚木沙弥郎氏の作品集に惹かれ、形と色を置いて染めてみたくなりました。邪道なのかもしれませんが試行で製作。結局、どんどん手を入れる事になり、これは何?で完成となりました。藍面は、母の残した糸(藍と茜)を使い刺し子風にと遊びました。

 

使用した植物:インド茜、インド藍

用いた技法 茜面: 濃淡、鉄媒染、板締め絞り、抜染、刺繍、ニードルフェルティング    藍面: 縫い絞り、濃淡、ニードルフェルティング、刺繍

 

Dさん 通信部 兵庫県在住 作品タイトル:生命の樹

普段、紙に絵を描く時、絵の具で狙った色を出すことは簡単です。草木染の場合さまざまな条件により、同じ植物だとしても染めた時の色はバラエティ豊かです。染色は狙った色を出すのは難じです。

今回の作品は、本物の絵画をモチーフにデザインしています。グスタフ・クリムト作「生命の樹」です。生命の樹という言葉から、草木染で植物の色を頂き布等に命を吹き込んでいる、命の繋がりと循環を連想しました。くるくるした枝、気に入ってます。

使用した植物:ヤシャブシ

用いた技法:型紙着抜技法、糸染め、フェルティング、刺繍

 

Tさん 通信部 東京都在住 

草木染と言う言葉さえ知らなかった僕にそれを教えてくれたのは母でした。寝たきりになりかけていた母がテレビで見たのでやってみたいと突然言い出し、ネットなどで探してたどり着いたのがののはなでした。

最初のレッスンを心待ちにしていましたが、始まる二週間程前に容態が急変してしまいレッスンを一度も受ける事が出来なかった事が悔やまれ、当時は模様を入れる技術など無かったので布を一枚ただ黄色く染めて寒く無い様にと天国に持たせました。

その為、修了製作のデザインを考える時真っ先に浮かんだのが母の顔だったので、大好きだった花の模様と母を亡くした大きな心の穴を埋めてくれた草木染と歩む人生の始まりにスタートと記しました。

使用した植物:インド藍、インド茜、矢車

用いた技法:板締め絞り、巻き上げ絞り、抜染、刺繍、フェルティング

 

Yさん 通信部 岐阜県在住

できるだけ身近にある草木で染色をしたいとの思いと、自分が持って使いたい鞄にしたいとの思いで、修了制作に取り組みました。

表面は縫い絞りとぼかし染め、絣染の綿糸と残り布で作ったタッセルで華やかに、裏面は、縫い絞りと鉄媒染で黒く染め、葉っぱ模様をクリのイガなどで染めた糸を使って刺繍を入れ、シンプル&モダンな作品にしました。

作品制作を通し、草木染の楽しさや奥深さをより一層実感することができ、今後の糧となりました。ありがとうございました。

使用した植物:栗のいが

用いた技法:縫い絞り、ぼかし染め、刺繍

 

Yさん 通学部 愛知県在住 作品タイトル:ミモザ

初めのデザインは、「さくら」を考えていました。しかし、思い描いていた桜のイメージとは程遠い色に染まってしまい急遽途中でデザインの変更。

ひらめきのようにミモザが浮かびデザインが決まると糸を染め直し、思い描いたような形が出来てくると作るのが楽しくなってきて一気に仕上げました。

今までは偶然できた色彩で綺麗と思って終わりにしていましたが、この作品で自分の思い描いた色を作ることの難しさを知りました。修了制作を制作するにあたり生みの苦しさ、作る楽しさ、両方を味わった気がします。良い経験になりました。ありがとうございました。

使用した植物:コチニール、ティンギ、メリケンカルカヤ、藍、栗、エンジュ

用いた技法:重ね染め、板締め絞り、縫い絞り、刺繍、ニードルフェルティング

 

Iさん 通信部 和歌山県在住 作品タイトル:四角

修了制作は、かばんの布地の厚さに適した二種類以上の染め技法や、染める植物などの選定と、たくさん決めることがあり、デザインが決定するまでたくさんの時間を要しました。

植物を煮出し布地を染め乾燥するまで、どのような色合いになるのか分からなく、ワクワクして出来上がりを待ちました。また、イメージどおりに作品が仕上がったときは、とてもうれしく、その反面違うものが出来たときのショックは…。しかし、失敗してもイメージに近づけるためには、何を追加するかを考える時間もとても楽しかったです。

使用した植物:コチニール、キバナコスモス、ニンジン

用いた技法:板締め絞り、巻き上げ絞り、着抜

 

修了制作のバッグは、ののはな草木染アカデミー「草木染教室 作品展」にて展示いたします。美しい玉川提の桜と合わせて、どうぞご覧くださいませ。

「草木染教室 作品展」

日時:4月1日(金)~6日(水)10時~16時

場所:ののはな草木染アカデミー

 

ののはな草木染アカデミー代表 松本つぎ代